特定調停
簡易裁判所に申立てをし、調停委員(裁判所)の仲介のもとで、債務者と債権者双方の合意に向け協議を行う方法です。
裁判所が任意整理手続きと同様に、利息制限法を用いた引き直し計算を行うことで債務額の減額が見込まれ、債務整理案(返済計画)の作成もしてくれます。
調停が成立すると調停調書が作成されるので、その内容に従い原則3年間で返済します。
特定調停のメリットとデメリット
メリット |
デメリット |
- 任意整理と同様に一部の債権者を除外できる。
- ギャンブルや浪費が原因でも利用可能。
- 任意整理と同様に将来利息は除外される。
- 裁判所が間に入るので、債務者本人が債権者と交渉をする必要がない。
- 自己破産や個人再生のように官報に掲載されることはないので第三者に知られる恐れがない。
- 自己破産のような資格制限がない。
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- 裁判所からの出頭に何度か応じる必要がある。
- 任意整理とは違い、未払い利息や遅延損害金は除外されない
- 過払金が発生していても特定調停では過払金の回収まではできない。(別途、過払金返還請求訴訟手続きが必要)
- 調停が成立すると判決と同じ効力があるので、調停成立後に支払いが遅れると差し押さえをうける可能性がある。
- 特定調停には強制力がないため、強硬な姿勢の債権者が
調停に応じず裁判所に来なかった場合、調停は成立しない。
- 5~7年程度はブラックリストに載ってしまう。
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【特定調停の流れ】
申立て以降は裁判所(調停委員)主導の下、手続きが進められます。
- 特定調停申立て
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相手方の債権者の住所地(営業地)を管轄する簡易裁判所に特定調停手続きの申立てを行います。
特定調停の場合、予納金(裁判所に収める費用)はないので、申立て手数料も安価で済みます。
法律により、自己破産等の裁判手続きを行った旨の通知を受けた後の取立行為は禁止されています(賃金業規制法21条第1項9号)。
裁判所の方からも手続き開始後に債権者へ通知がありますが、即座に対応したい場合は
債務者から受理表の写しを債権者に送付することで取立行為を止めることができます。
また手続き開始の通知と併せて裁判所から債権者に対して、債務者との取引履歴・契約書類の請求がなされます。
任意整理と同様に、請求した資料を利息制限法による引き直し計算を行い、新たに算出した債務額が返済額の目安となります。
この工程は全て裁判所が行いますが、任意整理と大きく異なる点として、債務額の再計算を行う中で
例え過払金が発生しても特定調停では過払金の返還請求まではできないので注意が必要です。
詳しくはこちら
- 調停委員の選任
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裁判所より調停委員が選任されます。
以後、申立て人(債務者)は調停委員の指示に従い手続きを進めることになります。
- 調停準備期日(調停委員との協議)
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申立てから約一ヶ月前後に裁判所から呼び出しがありますので、期日に従い出廷して下さい。
ここでは申立て人と調停委員が話し合い、
主に申立て人の生活実態や収入状況、今後の返済の見込みなどについての聴取が行われます。
得られた意見、資料を元に調停委員が返済計画案を作成します。
- 調停期日(債権者との協議)
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話し合いは調停委員が間に入って行うので債権者と対面して直接交渉するという事はありません。
調停委員が順番に一方の話を聞いてから、その内容を口頭で他方に伝える形式になっており、
申立て人と債権者との間で感情的な摩擦が生じないよう配慮されています。
また、実際には調停期日に出頭しない債権者が大半ですので、その際は調停委員が電話での交渉を行います。
双方の話を聞いた上で、調停委員が合意に向け適宜に調整・交渉を行います。
- 調停の成立/調停の不成立
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調停の成立
協議の結果双方が合意に至ると、最終的に合意を得た返済計画の記載された調停調書が作成され、調停は成立となります。
また、調停期日において合意に至らなかった場合でも裁判所から17条決定(調停に代わる決定)が下されることがあります。
調停成立後、後日申立て人の元へ正式な調停調書が送付されるので、記載内容に従い返済をしていきます。
・調停調書
調停成立時に作成される調停調停書には裁判でいう確定判決と同じ効力を保有しており、
仮に債務者が返済を怠った場合、債権者は訴訟を起こさなくても調停調書に基づき、直ちに給与差し押さえ等の強制執行手続きが可能です。
債務者は調書の記載内容には充分に注意し、滞りなく返済を行うことが大切です。
・17条決定(調停に代わる決定)
調停の最中、意見が折り合わず、話合いの見込みがない場合に、
解決のため裁判所が手続きを打ち切り、双方の公平性、一切の事情を考慮した上で、職権により
民事調停法17条に基づく決定(省略して17条決定・調停に代わる決定とも呼ばれます)を下すことがあります。
この決定に対し、当事者から2週間以内に異議申立てがなければ
17条決定は調停成立と同じ効力を保有しています。
異議申立てがなされた場合は効力は白紙に戻り、調停も不成立となります。
調停の不成立
万が一、調停が不調となった場合は、他の債務整理方法を検討することが必要になります。